幸せな働き方
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多様で柔軟な働き方について考えます​
Dec. 28, 2021
多様で柔軟な働き方-仕事と治療の両立(その3)
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治療しながら自分に合った働き方のできる社会に向けて…

|はじめに|

 少し前までは、職場内で「癌・がん」と聞くとセンシティブな印象が強く罹患者に対してどのような言葉を掛ければ良いのか、どのような接し方をすれば良いのか考えが及ばず、重荷にさえ感じることがあったのではないでしょうか。

 そして、罹患者自身も「職場に伝えるべきか」、「離職するべきか」などひとりで悩み苦しむこともあったでしょう。

 しかし、現代では2人に1人が癌に罹患すると言われており、近親者や職場内など身近なところでサバイバーと接する機会があります。

 

 ただ、病状のみならず、病気の受け止め方についても個人差が大きく、職場で治療と仕事の両立支援をする際には、制度上の形式だけにとらわれない丁寧な対話が求められる場面を想定しておかなければなりません。

 仕事をしたい罹患者の方々が不本意な離職をせずに、治療と仕事を両立できる環境を創り、誰もが幸せな働き方のできる社会になることを念頭に連載しています。

 

|働くことを持続可能にするためには|

 治療と職業生活の両立について、「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書」(厚生労働省, 2012)の中で、「治療と職業生活の両立とは、病気を抱えながらも、働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら、生き生きと就労を続けられることである」と定義しています。

 つまり、罹患社員が適切な治療を受けながら、働くことを持続可能にするためには、職場における理解が求められているのです。

 

 職場内において治療と仕事の両立支援を担当する社員が厚生労働省の推進する「治療と仕事の両立支援コーディネーター」研修を受講することで、両立支援についての理解、基本的な知識を得るきっかけとなり、職場内で罹患社員のサポートをする場面で慌てずに対処することが可能になるでしょう。

 ただ、一般的には専従の担当者がいるわけではなく、人事、労務、総務、庶務など複数の管理業務を抱えていることもあり、両立支援に向き合う時間が充分に取れない、あるいは産業医や保健スタッフ、産業カウンセラーのいない企業では、罹患社員の具体的なサポートが分からず戸惑ってしまうといったケースも考えられます。

 

 自社の組織の在り方と照らしたうえで、社外の「治療と仕事の両立支援コーディネーター」を活用(外部委託)し、罹患社員、企業(職場)・産業医および医療機関(主治医)の3者間で適切なコミュニケーションをとれるようコーディネート体制を築いておくことが求められます。

 

「両立支援コーディネーター」1) とは

「労働者(患者)やその家族からの依頼を受けて労働者(患者)に寄り添いながら相談支援を実施し、また、労働者(患者)、主治医、企業・産業医のコミュニケーションのサポートを行う者」です

 罹患社員は、病状について職場の上司や担当者には話し辛いこと、また今まで通りの仕事を治療と両立することへの負担や予後についての心身の不安などを抱えていることも少なくありません。  

 「職場に迷惑をかけたくない」という気持ちが先行し、仕事の継続や病気休暇後に復職希望があることを誰にも相談せずに、離職の決断を急いでしまうことがあります。

 また、病状によっては、高額療養費制度を受けたとしても様々な付加的な治療や生活支援が必要になり、経済的負担からくる精神のダメージを伴うことがあります。

 

 「離職タイミング多施設調査」(厚労科研高橋班, 2015)では、がん診断後、治療開始以前に4割の人が離職していたという結果があります。

 両立支援コーディネーターは、就業継続や復職を希望する罹患者から話しを聴くことで、不本意ながら離職の決断をしてしまうことをできる限り回避し、罹患社員と企業(職場)の連携(仕事の斡旋は含まない)、あるいは職場の両立支援体制の整備、運用面などのサポートに携わることもできます。

 

|不可能を可能にする柔軟な発想を…|

 先日、大学におけるキャリア科目の中で、学生に向けて固定観念・思い込みが組織活動のイノベーションの妨げになること、経験したことのないコトや前例のないコトにはネガティブになる傾向がある話しをしました。

 そこには、ある課題について、できない具体的な理由を掲出し、それらを踏まえたうえでできる方法を導き「逆転の発想」を学んでもらう意図があります。

 

 例えば、両立支援において、人事部門、管理職、あるいは一般社員の方々が「健康経営」が企業にとって重要だと分かっていても、日々の業務と比較して優先順位が低くなり、体制が整備されない状況が続き、取りかかるタイミングを逸してしまっていることがあります。

 一度、不可能と判断してしまったことでも、改めて考えてみると可能にする方法を見出すことができることもあり、固定観念にとらわれない柔軟な発想で考えを共有することも大切です。

 

 治療と仕事の両立を希望するビジネスパーソンが、安心して働ける環境があるということは、精神面での負担が軽減され、適切な治療を受ける機会を逃さないことにも繋がるのではないでしょうか。

 

|おわりに|

 前回の本ブログに記述しましたが、「がん患者の就労等に関する実態調査」(東京都, 2014)では、罹患後に退職した方のうち約7割が仕事を継続したかった、また「治療と職業生活の両立等の支援対策事業調査」(厚生労働省, 2013)では罹患者のうち調査時点で仕事をしていない方(退職者)の7割、仕事をしている方の9割超が仕事を継続したい意向をもっています。

 

 人材戦略の一環として、治療と仕事の両立支援コーディネーターを活用し、職場内での罹患者の有無に関わらず全ての社員の方々が治療と仕事の両立について理解し、相互協力のできる風土醸成、ソフト・ハード両面からの環境整備、そして健康経営の推進を図ることで、生産性の向上や成長力、持続力の強化に繋げていくことが重要と言えます。

 

 当社では、サステナブル経営(人材戦略) の観点から「治療と仕事の両立支援コーディネーター」によるサポートを提供しています。

 お問い合わせは、随時承ります。まずは、こちらのフォームよりご連絡ください。

 

 以降、次回に続く…。

〈出所〉

1) 独立行政法人労働者健康安全機構『治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル』P.5, 2021.4

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