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幸せな働き方
“幸せな働き方”探求
多様で柔軟な働き方について考えます​
Dec. 23, 2020

「多様で柔軟な働き方」の“ものさし”は働き手の価値観

はじめに

 ここ数年、「多様で柔軟な働き方」という表現は、政府の「働き方改革」の推進によって広く知られています。しかし、ことばが先行し、実際の働き方はそこまで変化していない、あるいはコロナ禍で一時的に働き方の選択肢が増えただけといった現状が見受けられます。

 厚生労働省(2019)のガイドラインでは「働き方改革は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革」としています。つまり、ここでいう多様で柔軟な働き方は、「個人のライフスタイルに応じた、型にはめない働き方」という解釈が可能です。

 とはいえ、ことばの持つ意味が曖昧であるが故に、「多様で柔軟な働き方」の実現には解決すべき課題が多く、探求を続けていこうと思います。

個人の価値観に拠る認識の違い

 そもそも、「多様で柔軟な働き方」をしている人、していない人の区別をどのようにつければいいのかという疑問があります。

 「ダイバシティ」や「フレキシブル」といった耳心地の良いことばを使うことで、何となくポジティブに捉えられてきました。

 生き方や働き方は、人の数だけあるはずですが、その中でこれらに共通する主立った多様性や柔軟性の要素を抽出し、幾つかのモデルケースが「多様で柔軟な働き方」として表面化しているように感じています。

 リモートワークやパラレルワークといった「手段」を、働き手が心から必要とし、実行した結果、「働きやすさ」や「働きがい」、「幸福感」に繋がっているのであれば、「多様で柔軟な働き方」といえるでしょう。

 一方、働き手が自ら望む働き方でなければ、企業がリモートワークやパラレルワーク、ワーケーション等を導入したとしても、従来の型:固定的な事業場かつ就業時間・休日と比較して、働き方の選択肢が増えただけという認識で終わってしまいます。つまり、働き方に多様な選択肢があることと同時に、選択肢の1つひとつにも働き手が希望する柔軟性をもたせる必要があります。

調査結果に見る働き方-副業について

 コロナ禍以前に有職者(1つの企業と雇用関係にある)に聞き取り調査をした際、副業を希望していない主な理由として「本業が充実(または忙しく)しており副業をする時間がない」「本業があるため余暇時間まで働きたくない」「現状、収入面で困っていない」「企業が認めていない」「副業にメリットを感じない(体調面の不安等)」という意見が挙がりました。

 一方、副業を希望する主な理由として「社会貢献したい」「自身のノウハウを活かしたい」「本業につながるスキルアップをしたい」「自分がやりたい仕事をしたい」「隙間時間に手軽にできることであれば自由だと思う」ということが挙げられました。

 対話を通じて、副業を希望していない人は、物理的にできないということに加え、特に現状に優る魅力を感じていない印象でした。そして、副業を希望する人は、現状に大きな不満はないものの「自己実現」への意欲が高い印象を受けました。

 

 2020年のコロナ禍に入って以降、主要な人材系企業(就職エージェント)が「副業・兼業」に関する調査結果を公表しています。これらの結果を見ると、副業希望理由の大半は「収入アップのため」となっており、雇用の厳しい実状を感じます。もちろん、コロナ禍以前の調査でも副業希望理由で「生計維持のため」が6割を占めている結果(リクルートワークス研究所, 2018)もあり、調査対象者の本業の経営状態、雇用形態や収入(可処分所得)、属性にも注視する必要があります。

 調査結果で最も気になったのは、副業を導入している企業の人事担当者の回答(マイナビ, 2020)で、導入理由が「社員のモチベーション向上」や「社員のスキルアップ」を抜いて、1位「社員の収入を補填するため」43.4%(N=947)というものです。コロナ禍で経営状態の悪化に起因しているということだけではなく、社員の総収入を増やすために他で働いてくれということであれば、根本的な企業の在り方を経営者が見直すべきであると考えます。

雇用する側からみた「多様で柔軟な働き方」

 企業が働き方改革について検討する際、企業にとってのメリットよりも働き手のメリットをしっかりと考えることが重要なのではないでしょうか。

 企業が持続的に経営上の競争優位性を確保するために必要となる「人材」のエンゲージメントを高めるためにも「多様で柔軟な働き方」を導入する目的は何かということを明確にしなければなりません。社内慣行的な人事制度の見直しに留まるのではなく、長期的な企業価値の向上に繋がる「多様で柔軟な働き方」に向き合う必要があります。

 企業が持続的に発展していくうえで、働き手の幸せ(働きやすさ、働きがい)の創造が重要課題といっても過言では無く、持続可能な社会の実現を見据えた、働き方の変革が最優先されることに期待します。

おわりに

 結論づけることの難しさはありますが、働き手が多様で柔軟と実感できる働き方をしていれば、ことばの持つ意味の曖昧さに言及する必要もありません。

 働き手が「多様で柔軟な働き方」を実感できていないとすれば、それは雇う側にとって都合の良い人事制度、非効率的な業務プロセス、社内外のコミュニケーションツールの未整備、そして社員もステークホルダーであるという視点の薄さに問題があるのではないでしょうか。

 働き手が「多様で柔軟な働き方」を実感し、働きやすさや働きがいが生まれれば、モチベーションも向上し、結果的に企業価値の向上に弾みがつくことを視野に入れ、経営戦略と連動した人材戦略として、早急の対応が要されると考えます。

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