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幸せな働き方
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Oct. 3, 2020

中小企業の効果的な「人材」活用をデジタル化で実現?

はじめに

 2020年9月菅内閣が発足し、「デジタル庁」新設に向けた動きが加速していますが、ここ数年の間、IoT〔(Internet of Things) モノのインターネット〕やAI〔(Artificial Intelligence) 人工知能〕の活用をはじめとするデジタルシフト、DX〔(Digital transformation) デジタルトランスフォーメーション〕等の情報に触れない日がないといっても過言ではないでしょう。

DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」1)

 

 今年に入りコロナ禍の影響もあり、デジタル化の機運が高まるなか、メディア等で発信されるDXの事例は、大企業やベンチャー企業によるものが大半を占め、中小企業のなかには「自社とどのような関わりがあるのか分からない」、あるいは関心はあるものの「DXに精通した社内人材がいない」、「DX投資の効果が見えない」、「コロナ禍による経営課題で手が回らない」といった声も聞こえてきます。

 

中小企業におけるDX

 業種・業態・規模・経営状況等を踏まえると中小企業を一括りにはできませんが、一般論として中小企業のDXが紹介される際、いままでの「属人的な業務」を自動化、デジタル化し、業務効率や顧客対応を改善した事例が散見されます。

 属人的な場合、一担当者の技能・知識がレベルアップされ、成果還元があることは企業にとってもメリットですが、業務プロセスが見える化されずノウハウが継承されないことや社内外の連携が取りにくいといったデメリットが生じます。

 いままで人間が行ってきた業務をデジタル化で完全代替するということではなく、企業としての社会価値の創造を見据え、「働く人やサービスを受ける側にとっての無駄=会社の無駄」を排除し、“人材を活かすためのDX”の発想をする必要があります。

 

DXによる効果と留意点

 例えば、発注業務のシステム化や顧客対応AIを導入することで業務を自動化し、発注や顧客対応の効率化を図っている事例があります。

 デジタル化で注目されているRPA〔(Robotic Process Automation) ロボティックプロセスオートメーション〕は、「これまでの人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した新しい労働力を創出する仕組み(Digital Labor)」2)ですが、この導入が急速に拡大しています。RPAの導入効果は、単純作業でありながら、複数のユーザーインターフェースを用い、複数システムによって実行している、“定型・反復型”の作業で特に期待されてきました。

 一方、人材(ひとりの人間)の経験やセンスによる発注ノウハウや現場で身に付けた接客の勘所を無視した完全自動化は、培ってきた差別化を逸脱し、DXの効果が期待できない可能性が否めません。

 

 DXは、高い技術の最新ソリューションを導入することで人材に取って代わるわけではありません。DXを考慮する際、業務プロセスの可視化、標準化、効率化を念頭に、人材(ひとりの人間)にしかない優れたノウハウに依存することなく共有化を可能にする業務環境を整え、経営資源の最適配分を図ることが重要になってきます。

 

 中小企業のDXとしては、組織全体が最適化された状態を俯瞰したうえで、煩雑な人事情報や生産性向上を妨げているアナログの非効率的な業務プロセスのデジタル化に目を向けると、一歩が踏み出し易いのではないかと考えます。

 

わりに-DXの目的を見定める-

 中小企業の人材不足が問題視されている状況で、企業が必要とする優秀な人材を活用することは、今後も重要な課題になってくることでしょう。

 限られた人材が効率良く優れたパフォーマンスを発揮できる組織を創出することが経営の効率化には不可欠であり、情報技術を活用することで働き方に変革をもたらし、人材を経営資源として有効活用することが求められます。

 

 DXの目的は、総体的には経営上の競争優位性を確立することですが、新時代を担う人材の十人十色ともいえる多様な仕事観を受入れ、働き方を改革することでもあり、社員の方々が幸せに働くことで労働生産性が向上し、相乗的に会社や会社を取り巻く環境も豊かになり持続可能な社会が実現されるのではないでしょうか。

 

〈出所〉

1)経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン) Ver.1.0』, 2018.12 (https://www.meti.go.jp)

2)一般社団法人日本RPA協会 (https://rpa-japan.com)

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