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幸せな働き方
“幸せな働き方”探求
多様で柔軟な働き方について考えます​
Feb. 23, 2021

“幸せな働き方”は「健康経営®」から…

はじめに

 働く皆さんは、“幸せな働き方”を求める前に、日々のストレスや体調不良から解放されることを望み、今は不調が無くても予防に関心が向いているのではないでしょうか。

 

 働き盛りの方々が、年齢を重ねるにつれ、自分自身の健康について考える時間を持つようになっていることに気付かれていますか。例えば、活力を維持するために運動をしたり、病気や肥満予防の食事をしたり、健診結果に不安を覚え生活習慣を改善したり、服薬や治療を余儀なくされたり、健康に関する情報収集をしたり、健康グッズを購入したり…。

 

 一般的には、個人の健康は自分自身で管理することだと思われている方が多いようですが、社員の健康に留意した「健康経営」について、経営者のみならず働く方々にも認知していただきたいと思います。

 

 そこで、厚生労働省の委託調査の結果を用い、健康経営の必要性について“幸せな働き方”目線で考えてみようと思います。

 

“幸福感”の判断は「健康状況」を重

 厚生労働省の「健康意識に関する調査」(2014)1) によると、幸福感を判断する際に重視した事項3つを選択する問いについて、特徴的な結果が示されています。

 

 全体のトップ5は、「1位 健康状況」(54.6%)、「2位 家計の状況(所得・消費)」(47.2%)、「3位 家族関係」(46.8%)、「4位 精神的なゆとり」(32.0%)、「5位 自由な時間」(20.9%)となっています。

 

 年代別のトップ3は、20~39歳では「1位 家計の状況(所得・消費)」(47.8%)、「2位 家族関係」(41.5%)、「3位 健康状況」(39.5%)、40~64歳では「1位 健康状況」(53.0%)、「2位 家族関係」(49.7%)、「3位 家計の状況(所得・消費)」(48.7%)、65歳以上では「1位 健康状況」(71.9%)、「2位 家族関係」(47.9%)、「3位 家計の状況(所得・消費)」(44.6%)という結果です(図1)。​​

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​出所) 厚生労働省『平成26年版 厚生労働白書』(2014)

厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)を基に筆者にて作成

 「健康状況」については、40歳以上で最も多く、特に65歳以上の7割が重視しています。39歳までの若い世代は、3位ですが約4割が重視していることが示されています。

 

 この結果から幸福感を判断する際、年代を重ねるにつれ「健康状況」を最も重視する傾向があるようです。それに加え、全体の4位に「精神的なゆとり」が入り、20~39歳では37.5%と高い結果となっており、全世代で病気だけではなく、“心”の健康も重視していることが分かります。そして、幸福感と心身の健康との関わりがあることがうかがえます。

 

 また、健康に関して何らかの不安を持っているかどうかについての問いでは、61.1%の人が「ある」 としています。

 さらに、不安が「ある」と回答した人の具体的に抱えている不安について、全体では「体力が衰えてきた」(49.6%)が最も多く、世代別に見ても大きな差はありません。一方、世代によって異なる傾向が見られたのは、「ストレスが溜まる・精神的に疲れる」と答えた人が20~39歳では55.8%に対し、65歳以上では14.3%と低い数値となっています。また、「持病がある」と答えた人は、20~39歳では 24.5%ですが、40~64歳では41.0%、65歳以上では51.9%と半数を占める結果になっています。

 

 若年から働き盛り世代では、からだよりも精神的な不安が上回り、働き盛りから高齢世代では、からだに不安を抱えている人の方が多いようですが、肉体的かつ精神的な「心身の健康」は“幸せな働き方”をするうえで、注視する必要があるといえるでしょう。

 

「健康経営」とは

 先述の通り、一般的には、個人の健康は自分自身で管理することだと思われている方が多く、健康と経営の関わりについて認識されていない、あるいは重視されていないといった現状があります。

 

 経済産業省によると「「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。また、「企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます」2) としています

  そして、経済産業省が制度設計し、日本健康会議が認定を行う「健康経営優良法人認定制度」があります。健康経営に取り組む企業等の「見える化」をさらに進めるため、上場企業に限らず、未上場の企業や、医療法人等の法人を「健康経営優良法人」として認定するものです。

 「健康経営優良法人2020」では、大規模法人部門(上位500法人を「ホワイト500」とする)1,473法人、中小規模法人部門4,813法人が認定されています(2021年2月1日現在, 経済産業省)。

 

 大規模企業だけではなく中小規模企業にも取り組んでいただけるよう、経済産業省と東京商工会議所でガイドブック3) を発行し、中小企業の取り組み事例が紹介されています。

 

 企業理念やビジョンに基づき、健康経営の具体策を明示し、全社への浸透・啓発を推進すると同時に、日々の健康づくりを積み重ね、持続的に取り組むことが大切です。既に実践されている企業事例を見ると、少なからず効果が出ています。効果測定は、健康診断の結果だけではなく、複数の要件を組み合わせ、楽しく管理できる手法を取り入れると長続きするのではないでしょうか。効果に即効性がない場合でも継続することで、社員の方々の心身の活性化や業績向上にも反映されていくと考えます。

 

おわり

 ここでは、「健康経営」の戦略策定には触れませんが、企業で働く人が“幸せな働き方”をするためには、自助だけではなく、企業が社員の健康を経営課題として受け止めることが重要です。

 

 つまり、企業の人的資源である働き手が効果的に活躍されることは、社員を取り巻く企業や社会環境にプラスの効果をもたらすことに繋がるという視点で、企業は「健康経営」を推進していくことが求められます。

 

 経営者が旗を振りトップダウンでの組織風土の変革、あるいは経営者に理解していただけるよう組織の横連携を強化し、ボトムアップで実効性のある提案をすることも重要となります。

 

 “幸せな働き方”ができる組織風土づくりは、国の施策や社会からの要請にやむなく応えるのではなく、今後は新しい働き方から発展し、当たり前のこととして形成されていくことに期待をしています。

〈出所〉

1) 厚生労働省『平成26年版 厚生労働白書』, 2014

2) 経済産業省 (https://www.meti.go.jp)

3) 経済産業省 (https://www.meti.go.jp よりPDFにて取得)

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です

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